060 箱

窮屈だし息苦しいけど
そこにそっとしまうだけで
心の疼きは少し治まる

あけてはいけない
みてはいけない
ルービックキューブのように
複雑でいびつな
僕だけの箱

059 バケツ

しんとした朝
パリっと割れる水

今日も朝が来た

058 残り少ない

分かっているけど
踏み出せない
制限時間はあとわずか
あなたが遠くへ行く前に

057 ねずみ色

白い息が新鮮に
街の色を輝かす

空はいつものねずみ色
早く粉雪落としておくれ

056 願わくば

あなたと同じ物を見て
あなたのそばで眠りたい

055 ぬばたまの夜

月に背いて君を抱く
揺れる炎にこの身を任せ
我欲に狂って刹那を貪る

滲む朱色に唇をあて
来るとも知れぬ未来を想う

054 人形

連れて行って
海の底まで
わたしは泣かない
血も流さない

いつまでもそばにいる

053 偽物

そこに存在する物に
偽物は存在しない

物であろうと
気持ちであろうと

052 24時間

息するように
恋してる
思うんじゃなく
思い出す
隣にいてね
いつまでも

051 何度でも

泥まみれでも止まらない明日