020 郷愁

引き出しから出てきたのは
小さな古い鍵だった

どこの扉のものなのか
いくつものノブに差し込んでみた

一番奥の最後の扉
錆付いたネジが軋んだ音をたてた

新緑の匂い
さざめき
紋白蝶

溢れ出てきたノスタルジア

019 君を待つ

白い息を漂わせ
小走りに駆けてくるのが好きだから
君の編んだ手袋をして
時計のしたで君を待つ

018 記念日

あなたと過ごす毎日が。

017 既視感

寝転んで
静かに落ちてくる雪を眺めた

次第に感覚が麻痺して
僕の身体が空に登っていった

君とさよならしたとき見た景色が
そこにあった

016 数える

時間
日付
年齢
あなたに会えない期間

015 影

いつのまにか僕から逃げて
好き勝手に歩いていったね
僕は随分探したよ
公園、グランド、学校近くの川の土手、
君は蹲り座っていた

君と僕とは一心同体
いつまでも離れられない光と影と
君は空を目指せばいい
僕は泥の上を這い蹲るから

014 鍵

月の扉の鍵を開け
暗闇ゆっくり這い出でて
星の光にまどろめば
僕の孤独は救われる

013 鏡

心の粒をひとしずく
鏡にそっと落としましょう
水面にゆれる彼岸花
悲しき面の息遣い

012 回転

世界は止まらない

011 カーテン

白いレースを頭にかぶり
日の光をキラキラ浴びて
一人でやった結婚式

ママの口紅こっそり借りて
ほんの少し背伸びした
窓に映ったわたしにキスを